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改革のための医療経済学を読んだ感想

改革のための医療経済学を読んだ感想

この本を読んだきっかけは橘玲著・事実 vs 本能 目を背けたいファクトにも理由があるを読んだことです。
事実 vs 本能の中で一番衝撃的だったのが、「喫煙が医療費を削減する」という記述です。

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今までの認識とは正反対で驚きました。
この記述の出典となる本も記載されていたため早速購入することにしたのが本著です。

改革のための医療経済学は2006年発行のため13年前の本です。
ちょっと古いですが、そこに書かれている日本の医療費の真実は目を疑うものばかりでした。

この記事では、現在の数字と比較しながら改革のための医療経済学を読んだ感想を書いていきます。

・高齢化は医療費の増大に影響を与えない
・生涯で使う医療費は死亡直前の2年間に集中する
・医療費高騰の真の原因は医療技術の向上
・医療費削減に効果的な政策は2つだけ
・予防医療が医療費を高騰させる

●高齢化は医療費の増大に影響を与えない

まず驚いたのは、高齢化は医療費の増大に影響を与えないということです。
高齢化=医療費上昇の原因だと思っていたためこれは衝撃でした。

国際比較研究によると以下の結論が出ています。

・高齢者の全人口に占める割合が増大しても、総医療費上昇への影響はほぼゼロ
・70歳で亡くなっても90歳で亡くなっても一人当たりの総急性期医療費はほぼ同じ
・70歳時点での健康状態は死亡時までの総医療費に影響を与えない
・死亡時期を予測して死亡直前の医療費を削減するのは現状では不可能

これはOECD参加30カ国の1960年以降の高齢化を含めた総医療費の解析結果です。

日本の高齢化のスピードが欧米諸国よりも早いことを加味しても、医療費全体へ及ぼす影響は少ないということです。

●生涯で使う医療費は死亡直前の2年間に集中する

人が一生涯で使う医療費は死亡直前の2年間に集中します。
終末期医療もこの一部です。

そのため70歳で亡くなっても90歳で亡くなっても一人当たりの総医療費はほぼ同じで、100歳まで生きても総医療費の上昇はわずかということです。

また70歳時点での健康状態も死亡時までの総医療費に影響を与えません。
病弱な人は早死にするためで、一時的に多くの医療費を使ってもトータルではむしろ健康な人の方が総医療費は高くなるのです。

寿命が伸びることで上がるのは介護費であって、医療費ではないのです。

厚生労働省によると日本人の生涯医療費は2016年で2700万です。
年齢が上がると一人当たりの医療費が増えますが、これはそのころに寿命を迎えるためです。

生涯医療費が死亡直前の2年間に集中するということがわかれば、年齢が上がるから医療費が増えるのではなく寿命を迎えるから医療費が上がるということがわかります。

●医療費高騰の真の原因は医療技術の向上

高齢化が医療費の上昇に影響を与えないなら、何が原因なのでしょうか。
それは、医療技術の進歩です。

先進国間での医療費上昇の主な原因は医療技術の進歩であると結論が出ています。
本書では医療技術の向上とは具体的に何なのかについては触れられていませんが、調べると薬価の高さが大きな影響を与えているようです。

日本の医療費支出は先進国で最も低いのに薬価は世界一高いためです。
厚生労働省の資料で医療費の伸びの分解がグラフで表されています。

全国保険医団体連合会のホームページでも、日本の薬価が国際的に突出して高く、医療費増加の主な原因であると指摘しています。
日本の医薬品産業が、他の製造業に比べて異常に高い収益率を享受していることが高薬価の原因ということです。

※追記

上念司著「タダより高いものはない」に、医療費増大の理由が書かれていました。

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医療経済学では、医療費は次の式で求められます。

医療費=P(医療サービスの単価)×Q(消費されるサービスの量)

・米国はPが高いため患者は必要以上のサービスを希望しない
・欧州は高額医療機器の数の制限、専門医への受診はかかりつけ医の紹介状必須などしてQをコントロール
・日本はPが安い上にQを直接コントロールする手段を導入していない珍しい国

日本はPが安く固定されているため、Qを増やすことでしか儲けを出せない薄利多売モデルになっているということです。

解決策としては診療報酬の引き上げや、科学的根拠に基づかない医療サービス(風邪に対する抗生物質やうがい薬)・安価な薬(総合感冒薬、抗アレルギー薬や湿布)を保険対象から外すことなどを挙げています。

●予防医療が医療費を高騰させる

予防医療とは3種類あります。

一次予防(発生の予防)  予防接種、肥満・喫煙などの生活習慣改善指導
二次予防(早期発見・治療)がん検診、人間ドッグなど
三次予防(診断確定後の進行を遅らせる)リハビリ・外科手術など

三次予防はもう治療そのものなんじゃないのという感じもしますが、予防医療に分類されるそうです。
そして予防が治療よりも効果的とは限らないとも述べています。

人間1人の寿命を一年延長させるために追加でいくら必要かで比較してみます。
数字が低いほど費用対効果が大きいということです。

一次予防 64万
二次予防 296万
三次予防 283万

このうち予防によるコスト削減が期待できるのは一次予防である予防接種の一部のみということです。
つまり、ほとんどの予防医療がコスト削減に効果がないだけでなく、かえって医療費を高騰させる原因となっています。

●予防医療はあまり浸透していない

とはいえ日本では予防医療はあまり浸透していません。
以前Voicyで支援家Kさんがおっしゃっていましたが、予防医療はビジネスにはしづらいそうです。

予防医療に取り組むよりも、病気になって治療を受けた方が金銭的負担が少ないためです。
予防接種や定期検診は全額自費ですが、病気になれば保険適用で3割負担になります。

また、予防医療を面倒だと感じる人がほとんどです。
わざわざお金をかけて面倒なことをしようという人は少ないですよね。

経済的な側面でいえば予防医療が浸透しないのはコスト削減になりますが、健康と引き換えになります。
その辺りは個人の選択になりますね。

●喫煙奨励が政府の医療支出と年金支出を削減する

予防によるコスト上昇でよく知られている例が禁煙による肺がん等の予防です。
私が本著を読むきっかけにもなった話題ですが、これもはっきり書かれています。

たばこ増税によって喫煙量・喫煙率が低下し、肺がんなどの患者が減少すると短期的には医療支出が削減されます。
しかし禁煙により早死にを予防できても、長生きするとタバコと関係ない病気にもかかります。

また長生きにより年金の受給期間も伸びるため、社会全体で長期的には医療費と年金支出を上昇させるのです。
このことは医療経済学では常識であると橘玲さんは語っていましたが、よく考えればその通りですね。

これにより喫煙者への見方も少し変わりました。
タバコを吸うことで税金をたくさん納め、早死にすることで国家の支出を減らしてくれるのです。

喫煙マナーさえ守ってくれれば国家にとってありがたい存在なのだなと思うようになりました。

●医療費削減に効果的な政策は2つだけ

・保険機関から医療機関への支払いに上限を設けること
・家庭医を受診しなければ専門医を受診できないようにすること

この二つを最も厳格に実施してきたのが英国で、次いで実質的に機能してきたのが日本です。
英国と日本が先進国での医療費支出が最低水準なのはこのためだと言われます。

●医療費に対する見方が変わった

「75歳以上が医療費の36%を使ってる」
などと見ると世代間不公平を感じていましたが、そうではないということがわかりました。

国民一人当たりが一生涯に使う医療費は変わらず、私たちも寿命を迎える頃には同じくらい使うからです。
高齢者の数が増えたため単純に母数が上がっただけということです。

●まとめ

改革のための医療経済学を読んだ感想でした。
現在の数字と比較しても頷ける部分が多く、大変参考になりました。

古い本なので手に入りにくいですが、喫煙に関する医療経済学の記述は橘玲先生の著作でも見ることができます。気になる方は読んでみて下さい。

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