「ゼロリスク社会」の罠~「怖い」が判断を狂わせる~ を読んだ感想
「ゼロリスク社会」の罠~「怖い」が判断を狂わせる~ を読んだ感想です。
・リスクを過大評価する10の要因がある
・リスクの見積もりを最も狂わせる要因はマスコミの報道
・リスクはあるかないかよりも量の方が重要
・感情に訴えられると冷静な判断ができなくなる
・脳は怠け者で、思考を省略しようとするクセがある
心配・怖い・不安の原因はわからないことにあります。
心配・怖い・不安と感じたら自分は今冷静な判断ができなくなっていると自覚し、信頼できる情報源からの数字を見て正しくリスクを計算しましょう。
●リスクを過大評価する10の要因がある
ハーバード大学リスク解析センターによると、リスクを強く感じるようになる10の要因があります。
・恐怖心
・制御可能性(自分でコントロールできるか否か)
・自然か人工か
・選択可能性(自分で選び取ったリスクか否か)
・子供の関与 自分の子供に関することは、リスクを過大に感じる→リスク判断を大きく狂わせる原因となる
・新しいリスク 見知ったものにはリスクを低く見積もるが、知らないことについては非常に怖く感じる
・意識と感心 大きく報道されているほどリスクを強く感じる
・自分に起こるか
・リスクとベネフィット(利益)のバランス
・信頼 リスクさらす相手や、リスクについて説明する者に信用が置けなければリスクの感じ方は高まる
ああ、確かに…と感じる部分が多いですね。
子供のこととなるとリスクを課題に評価して保険に入ったり、感情に訴えられると数字が頭に入ってこなくなります。
著者によるとこれにプラスして、好きか嫌いかもリスク判断を誤らせるそうです。
人は信じたいものしか信じないし、見たいと思うものしか見ない。
だから自分の意見や主張に寄り添う意見を受け入れ、それ以外の反証は無視したがるとのこと。
同じ傾向の人が集まることでより強化されるため、SNSは思考の増幅装置となっています。
●リスクの見積もりを最も狂わせる要因はマスコミの報道
本著によると、リスクの見積もりを最も狂わせる要因はマスコミの報道です。
マスコミにとって情報は商品で、リスクを実際よりも大きく報じ、感情に訴えて危機を煽るのが仕事です。
人々にとって悪いニュースこそがマスコミにとって良いニュースで
人々にとって良いニュースは、マスコミにとって都合の悪いニュースです。
危険だ、というよりも安全だという方が遥かに難しいです。
安全と言って後から危険が発覚すると責任が発生します。
誰も責任を負いたくないのです。
●リスクを計量・比較して判断する
リスクとは、不幸な出来事が起こるかもしれないことで危険そのものではありません。
リスクはあるかないかより、どの程度の量含まれるのかの方が重要です。
リスクをきちんと測ることができないと無駄な労力やコストがかかります。
リスクの過大評価はしなくていいリスク回避のために余分なコストをかけてしまいます。
では、どうすればリスクを正しく計測できるのでしょうか?
リスクは発生確率×結果の重要性で判断します。
危険がどの程度かわからないうちは因果関係がはっきりしていなくても対策、調査を行うことは大事です。
リスクの量が判明してからはリスクと利益を計量し、利益が上回るときに対策を採用するのが合理的です。
BSE、ダイオキシン、環境ホルモンなども「当時言われていたほどのリスクはない」という結論が出ています。
ただ日本は減点法文化のため、一度決めたことを止めるのは難しいそうです。
リスクはゼロにならないことも理解しておく必要があります。
あるリスクを削減するにはコストが必ずかかるからす。
家に閉じこもれば事故や感染リスクは下がりますが、運動不足やストレスによる病気のリスクは上がるしお金を稼ぐこともできません。
●数字よりも信頼が大事な時もある
リスク判断において厄介なのは、恐怖に支配されると数字を理解できなくなる点です。
恐怖や心配という感情に支配されている人に対しては、客観的なデータを示して論理的にリスクを説明してもほとんど効果がありません。
人は感情に訴えられると冷静な判断ができなくなってしまいます。
かつて保険屋の上司に言われたことがあります。
相続税がいくらかかるという話をしてはいけない、相続税がかかると大変、と思わせることが大事だと。
数字から興味関心を逸らし、感情に訴えることがいかに人を動かしやすいかを物語っています。
自分の感情や判断が優先で、数字を信用しない人もいます。
信じてもらうためには数字だけでなく信頼関係が大事です。
その人の信頼できる情報源から、正しい情報を聞かないことには意見を変えるのは難しいでしょう。
専門家なら信頼できるかというとそうとは言い切れません。
専門家は専門分野の一つか二つに詳しいだけで、発言の責任を取りたくないので専門外の話をしたがらないためです。
重要なのは専門家なのか素人なのかよりも信頼できる情報を集められるか、正しく計算できるかの2つです。
●脳は怠け者で、思考を省略しようとするクセがある
人はリスクを客観的に捉えることが苦手です。
エネルギー消費量の多い個体は食料が少ないと生き残れませんが、脳は非常に多くのエネルギーを消費します。
そのため「考えなくても済むことはなるべく考えないようにしよう」という性質があり、思考を省略しようとするのです。
それが論理的に正確な危なさを捉えることの妨げになるのです。
また思考を省略しようとするクセが、同調行動にもつながります。
人は自分の行動が適切かどうか、他の人と比べて確かめています。
複数の人の行動は増幅されがちで、思考の省略のため多数派の判断は正しいはずだと思い込むのです。
日本人は周囲と同調するように教育された大人しい民族で、空気の読めない行動はなかなかできません。
多数派を動かすにはやはり、信頼できる情報源からの正しい情報を周知することでしょう。
●まとめ
「ゼロリスク社会」の罠~「怖い」が判断を狂わせる~ を読んだ感想でした。
・リスクを過大評価する10の要因がある
・リスクの見積もりを最も狂わせる要因はマスコミの報道
・リスクはあるかないかよりも量の方が重要
・感情に訴えられると冷静な判断ができなくなる
・脳は怠け者で、思考を省略しようとするクセがある
心配・怖い・不安の原因はわからないことにあります。
心配・怖い・不安と感じたら自分は今冷静な判断ができなくなっていると自覚し、信頼できる情報源からの数字を見て正しくリスクを計算しましょう。
「ゼロリスク社会」の罠~「怖い」が判断を狂わせる~はとても読みやすくためになる一冊です。
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