森田洋之著・医療経済の嘘を読んだ感想
森田洋之著・医療経済の嘘を読んだ感想を書きます。
サブタイトルは「病人は病院で作られる」ですが、まさにその通りだという事実を、データをもとに解説。
本編は財政破綻で病床数が171床から19床に激減した夕張市のデータをもとに展開されます。
「病院がなくなったら、病人や死人が増えて大変なんじゃないの?」
という直感に反して、夕張市では一人当たりの医療費。死亡率ともに低下したのです。
これはどういうことなのでしょう?
財政破綻後の夕張市に勤務する医者である著者が分析します。
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●高齢化率48%の夕張市で病院が減ったら、みんな元気になった
夕張市は平成19年に財政破綻し、それに伴い病床数も171床から19床に激減しました。
住んでいる人たちは病院が減って、さぞ困っているだろうと思ったらそうでもないのです。
財政破綻で病院が減った夕張市のデータです。
・2018年日本人口の高齢化率は28%
・夕張市は高齢化率48%
・救急出動は約半分になった
・一人当たり医療費は減った
・死亡率は変わらなかった
・病死が減って老衰(自然死)が増えた
夕張市民は病院がなくても元気だというのです。
昔はどこもそうでした。
病院が減っても死亡率は変わらなかったのですが、死因には大きな変化がありました。
それまではガン、心筋梗塞、肺炎が上位3位でしたがこれらの死因は低下し、逆に老衰が増えたのです。
老衰とは自然死のことですが、死亡診断書に老衰と書くのは難しいと書かれています。
老衰と診断できるのは特に大きな病気もなく徐々に体力が弱ってきた場合や、介護施設などで家族から「検査などしないで自然に看取ってください」と言われる場合に限られるからです。
●医療費が高くても寿命は伸びない
住んでいる地域によって病院数や医療費は大きく異なります。
最も多い県は人口10万人あたり約2400床の高知県、一番少ない県は約800床と3倍もの開きがあります。
では病床数の多い県の県民は少ない県の3倍も病気になるかというと、そんなことはありません。
ですが医療費を見ると、病院の多い県は少ない県の2倍も医療費を使っているのです。
病院がたくさんあって医療費もたくさん使えば寿命は長いかというと、そうでもありません。
むしろ男性ではやや右肩下がりです。
ここから読み取れるのは、
・病院が増えると医療費が上がる
・病院が増えても寿命は伸びない
つまり、病院が病人を作り出しているということです。
●日本では質の悪い病院が淘汰されない
日本は人口当たりの病床数が世界一多く、アメリカやイギリスの4倍もあります。
医療機器も世界一の保有数で、それに伴い国民一人当たりの医療費も高いです。
なぜこうなったかというと、原因は医療市場の失敗にあります。
自由市場では通常、競争が過熱すれば売り手の数は減り、適正価格に落ち着いていきます。
競争が働けばサービスのよくない売り手は行き乗れず、ライバルが減れば価格競争も落ち着くからです。
ところが日本の医療では市場原理が働きません。
理由は供給過剰・過当競争なのに
・健康保険により自己負担額は非常に安いため、安易な受診に繋がっている
・医療の良し悪しは利用者には判断しにくい
・判断できても受診は一回のみなので再現性がない
これを解決するにはどうしたら良いのでしょうか?
●病院にお任せにせず、自分の頭で考える
解決策
・自分や家族にとって本当に必要な医療について話し合う
・その上で、家庭医に相談する
先に述べたように、日本の病院は供給過剰・過当競争なのでお任せにしているとどんどん治療や検査を勧められます。
でも、それが本当に必要なのかどうかよく家族で話し合い、決めておくことが大切です。
国民のほとんどが余計な延命治療はせず、自然に亡くなりたいと思っています。
ですが実際は高齢者の8割が病院でたくさんの管に繋がれて亡くなります。
事前に話し合っておかないと、
「お母さんにはいつまでも生きていてほしい」「できるだけのことはしてあげたい」
という家族の意向が優先され、本人が望んでいないのに延命治療が施されてしまうからです。
本人の意識がはっきりしていない場合は悲劇となります。
●胃ろうの人でも8割食べられる
病院は少しのリスクや世話にかかる手間を省こうとします。
そのために必要のない処置が施されることも多いのです。
実際に胃ろうで、管から直接栄養を入れるようになった人のうち8割は口から食べることができるというテスト結果もあります。
介護施設への入所は胃ろうが条件のところもあります。
労力や心配をしなくていいからです。
介護職員の人手不足という問題もありますが、誰も望んで胃に穴を開けたいなんで思いませんよね。
活動量の減った老人は必要なカロリーも多くはないので、口から食べられる分だけで十分だと思います。
体が受け付けないのは、体がそれほど栄養を必要としてないからです。
また同じように、点滴は口から飲めない人です。
チフスなどのひどい下痢でも、水分は口からとったほうが良いとされています。
薬を大量に入れるためだけにある
歳をとれば、不具合が生じるのは当たり前で、薬や機械でごまかしても、治すことはできません。
人間は必ず死ぬからです。
また自然死は脳内にモルヒネ様物質が分泌され、夢見心地のまま苦しまずに死ねると言います。
これらを踏まえると、夕張市で自然死が増えたというのはとても幸せなことだと思います。
余計なことはせずに自然に身をまかせることができるからです。
食べられないなら無理に食べす、水分も口から取れるだけでいい。
それが昔ながらの最後で、一番苦しまずに死ねる方法なのです。
●末期患者には延命処置を勧めるが、自分だったら何もしない医師が約半数
日本老年医師会という、終末期医療への関心が高い医師789人へのアンケートが記載されています。
「認知症末期で食べられなくなった患者にどの治療法を進めるか」
何もしないは10%
「自分が患者だったらどうしたいか」
何もしない、死んでもいいから口から食べたいが46%と一気に増えます。
延命措置は本人にとって苦痛であることを医師自身もよく認識しているためだと思われます。
●延命措置は本人にとって苦痛でしかない
「大往生したけりゃ医療と関わるな」では、胃ろうや点滴、鼻チューブなどの延命措置がいかに患者にとって苦痛かが書かれています。
・点滴の中身は薄いスポーツドリンクで、無理やり水分を入れるため体はむくみ、最終的に溺死状態になる
・鼻チューブはとても不快なので抜こうとする患者が多く、抜けないように手を縛る
・胃ろうでは健康老人を想定したカロリーを注入するため体が受け付けず、喉の奥に管を突っ込んで吸入という拷問に耐えないといけない
読んだだけでどれも絶対受けたくなくなります。
点滴の中身がただのスポーツドリンクなら口から飲めばいいし、飲めなくなったら自然に任せて死にたいです。
自然死(老衰)は脳内モルヒネ様物質が分泌されるため、夢見心地で意識が薄れていき、苦しまずに死ねると言います。
これらの処置が必要になるのは末期の患者に対してで、本人の意思が確認できないことが多く家族の意向によって延命処置がなされます。
そこにあるのは家族の自己満足だけで、患者の意思は置き去りです。
医者も延命処置を施したほうが儲かるので、患者に対しては勧めることが多いのでしょう。
自分が患者だったら何もしない医師が約半数という数字に、そのことがよく表れています。
ですが自分の意思がはっきりしない状態で延命処置を断るには前もって家族に意思を伝えておく、書面で残す、家庭医に伝えるなど様々な準備が必要です。
ですがそうすれば、医療費を心配することもなく、お金を使い切って死ぬこともできます。
終末期医療費といって、死ぬ直前の2年に集中することがわかっているためです。
●医者も商売、儲けるのが基本と心得ておく
また船瀬俊介著・老人病棟ではこのように書かれています。
・日本は診療報酬(単価)が低く固定されているので、儲けるためには患者を多く集めるしかない
・借金して病院を経営している医者は儲けを出さないといけない
・CTのローンは1億もする
・放射線の被ばく量はレントゲンの300倍だが、その事実を知ると誰もCTを受けなくなるので伝えられない
・医療は薄利多売モデル
自分の身は自分で守るしかないのです。
●まとめ
森田洋之著・医療経済の嘘を読んだ感想を書きました。
医療関係の本はテレビや新聞で報道されない事実がたくさん書かれていてとても面白いです。
大手スポンサーである製薬会社や保険会社の意向に反する事実は報道できないからです。
これからも色々な本を読み進めていきたいと思います。
気になる方は、ぜひチェックしてみてください。
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